« えどはくカルチャー/特別展「ぺリー&ハリス展」関連講座 | メイン | 「ドラマチック幕末〜篤姫の生きた時代〜」 »

April 16, 2008

植松三十里『天璋院と和宮』

植松三十里『天璋院と和宮』

平成20年2月、作家で東京龍馬会の会員でもある植松三十里さんの書き下ろし歴史小説がPHP文庫から刊行されました。
幕末、徳川幕府は大きく揺れ動いていました。そんな時、第十三代将軍家定の正室として、薩摩藩主島津斉彬の養女篤姫が大奥に入ります。数年後、家定が逝去すると、篤姫は天璋院となり、そして、第十四代将軍家茂の妻として孝明天皇の妹和宮が京都からやってきます。
はからずも姑と嫁の関係になった天璋院と和宮は、始めは、まったく違った環境としきたりの中で育ったこと、周りに多くの女性が仕えており直接の会話が難しい状況から、なかなか心の交流をもてずにいましたが、それも時とともに解消してゆきます。
やがて二人は、時代が江戸幕府の滅亡、戊辰戦争の開始と急展開する中、互いに力を合わせ、江戸無血開城、徳川宗家の存続という歴史に残る事績を成し遂げ ていくことになります。「大奥」という舞台から幕末の激動を描いた本書は、歴史を見る新しい視点を読者に提供してくれることでしょう。

【植松三十里さんのブログ「松の間の床の間」より】
カバーの見返し部分に、本文の一部が引用されているのですが、特に編集者と打ち合わせたわけではないのに、私の好きな部分を選んでもらえて、ちょっとうれしい。以下、カバー見返しの引用文。

慶喜の弁解を、天璋院は強い口調でさえぎった。
「何の責任も、お取りにならないのですか」
慶喜は一瞬、呆然として、それから我に返ったように応えた。
「もちろん取ります。帝がお命じになるのであれば、将軍職だけでなく、徳川家の当主としての座も退きますし、切腹ということであれば、いさぎよく切腹いたします」
天璋院は冷ややかに言った。
「帝がお命じになればでは、遅いのです。和宮さまにしても、何の手土産もなく、朝廷と御家の仲立ちは、できますまい」

以上は、徳川慶喜が鳥羽伏見の戦いに負けて、軍艦で江戸に逃げ帰った後の対面シーンで、天璋院の気の強さを、前面に押し出した場面です。そして本文では、さらに過激な言葉が続きます。

慶喜は怪訝な顔で聞いた。
「手土産とは」
「朝敵の生首でも」
一瞬にして慶喜の顔色が変わった。
切腹を口にしながらも、自分の生首を差し出すとまでは、思い至らなかったらしい。
天璋院は、いっそう冷ややかに言った。
「前将軍の生首が、都の三条河原に晒されたら、旗本八万騎は黙ってはおりますまいな」

勝海舟は晩年のインタビューで、「天璋院はしまいまで徳川慶喜が嫌いさ」と話 しています。その言葉が、私の天璋院のイメージづくりの決め手でした。他人から見て、人の好き嫌いがわかるというのは、かなりはっきりした性格の女性だろうし、慶喜が嫌いというのは、おそらく彼の行動のあいまいさが許せなかったのでしょう。

和宮に関しては、一昨年『女たちの江戸開城』でも描きましたが、京女、公家の娘、才媛という三拍子揃った侍女たちが周囲を取り囲み、最強のプロジェクト・チームが形成されていました。
そんな京女集団と天璋院とでは、肌が合うはずがありません。それでも幕府崩壊 の際に、天璋院と和宮が手を握ったのは事実なのです。そこに至る経緯には、幕府 が傾いていくという時代背景がからんでおり、女同士のドロドロだけではない、幕末ならではの大奥の面白さがあります。

私にとっては『女たちの江戸開城』の前編ともいうべき作品だけに、今回の『天璋院と和宮』を書くにあたっては、特に下調べの必要がなく、書き下ろしの依頼を いただいて、すぐに書き始め、一気に、楽しく書き上げることができました。読者の皆さんにも、楽しく、気軽に、読んでいただければ幸いです。

【発行所】PHP文庫
【発売日】2008年2月 ※好評のため、4月増刷が決まりました。
【体裁】文庫版、208頁
【定価】本体価格571円+税
【購入方法】
最寄りの書店でお求めください。
7月に開催する東京龍馬会の集会会場にて、割引価格で販売します。当日は植松さんのサイン会も予定しています。

※3月には、新人物往来社から、植松三十里『お龍』が刊行されました。後日、こちらの本も紹介したいと思います。

*よろしかったらこちらのバナーをクリックして下さい。>>> 人気ブログランキングバナー

投稿者 minagawa : April 16, 2008 10:23 PM

トラックバック

このエントリーのトラックバックURL:
http://www.tk-ryoma.com/cgi/mt/mt-tb.cgi/477

コメント

詩吟大会で篤姫をテーマに30分程の詩吟構成吟を作りたいのですが、篤姫や篤姫の身近な人々の詠った和歌とか漢詩を探しています。そのような書籍があれば購入したいので教えてくだされば幸です。
〒北海道河東郡音更町雄飛が丘南区9-3
今井武 電話0155-42-5196番

投稿者 今井武 : May 6, 2008 05:01 PM


>今井武さま

コメントありがとうございました。
詩吟大会で篤姫をテーマにした詩吟を作るとのこと。
今井さんのコメントを掲示板に転載したところ、下記のようなメールが届きました。

---------
篤姫について勝海舟詩歌集に

天璋院殿の御一周忌に
くちもせずのこれる去年(こぞ)の袂をもしらで時雨のまなくふるらん
思い出す去年の時雨やしのぶらん忍が岡にそむる紅葉(もみじば)

というのがありました。

------------

届いたメールによれば、勝海舟が詠んだ歌があるようですね。

書店には、たくさんの篤姫関係の本が並んでいますが、わたし自身、それほどたくさん購入しているわけではないため、お役にはたたないかもしれませんが、江戸東京博物館で開催された『天璋院篤姫展』には、篤姫の和歌短冊なども展示されていて、図録には、篤姫の和歌の釈文などもついています。今、この展示は大阪歴史博物館で開催されていますので、図録を通販でお求めになってはいかがでしょうか。お値段は2000円以上で、なおかつ、大型本なので送料もそれなりにかかると思いますが、、、

大阪歴史博物館の展示については、コチラで紹介してありますので、電話で図録の購入方法をお尋ねになってはいかがでしょうか。
http://www.tk-ryoma.com/cgi/mt/archives/2008/04/post_284.html


それから、天璋院の「熱海箱根湯治日記」という直筆の資料があります。ここには、和宮がなくなった箱根を訪ねた天璋院が、和宮のことを詠んだ和歌も書かれています。数年前に開催された「和宮展」に展示され、その図録に載っていますが、今でも入手できるとどうかは不明です。ですが、活字になっていると思うので、篤姫に詳しいサイトでお聞きになってはいかがでしょうか。

篤姫のことを、わかりやすく書いた本としては、寺尾美保『天璋院篤姫』がいいかもしれません。著者は尚古集成館の学芸員をされている方です。この本に、安政4年に御台所となった篤姫が、斉彬に宛てた年賀状(尚古集成館所蔵)が全文紹介されていますが、この手紙などは、詩吟に使ったら面白いかもしれません。

とりとめのない回答ですいません。
篤姫についてのホームページなどでお聞きした方がいい情報が得られると思いますので、他でもお尋ねになるといいですよ。

詩吟大会で、よい篤姫の詩吟が披露できることを願っております。

投稿者 みながわ : May 7, 2008 10:25 AM

コメントしてください




保存しますか?